ウォシュレット沈黙その朝のパニック
いつもの朝、いつものようにトイレに入った。眠い目をこすりながら用を足し、さてスッキリしようかと壁のリモコンの「おしり」ボタンを押す。ウィーン。小さなモーター音がして、ノズルが出てくる気配はある。しかし、肝心の温かいシャワーが、いつまで経っても出てこないのだ。「あれ?」もう一度押す。ウィーン。…しーん。三度目。ウィーン。……。冷や汗が背中を伝う。え、嘘でしょ?壊れた?我が家のウォシュレットは、もう10年選手だ。いつかこんな日が来るとは思っていたけれど、まさか今日、このタイミングで?頭の中がぐるぐるする。とりあえず、もう一度ボタンを押してみる。やっぱりダメだ。次に試したのはリモコンの「止」ボタン。これは反応する。ノズルはちゃんと引っ込む。ということは、リモコンの電池切れではなさそうだ。次に疑うのは、水の供給。トイレタンクの横にある、マイナスドライバーで回すタイプの止水栓を見る。ちゃんと開いているように見える。念のため、少し左に回してみる。うーん、変化なし。こうなったら、最後の砦、フィルター掃除だ。説明書なんてどこにしまったっけ?確か、買った時の箱に入れて物置の奥深くに…。探すのが億劫だ。そうだ、ネットで検索しよう。「ウォシュレット 水が出ない フィルター掃除」。便利な世の中だ。うちの機種と似たタイプの解説動画を見つけた。止水栓を閉めて、ホースの付け根のフィルターを外す、と。動画の通りにやってみる。フィルターには、思ったよりゴミは付いていなかった。一応、歯ブラシでこすって水洗いし、元に戻す。これでどうだ!祈るような気持ちで止水栓を開け、リモコンのボタンを押す。ウィーン。……。だめだ。完全に沈黙してしまった。万策尽きた。これはもう、プロを呼ぶしかない。諦めて、スマートフォンの画面で修理業者を探し始めた。快適な日常が、いかに脆い基盤の上にあるかを思い知らされた、そんな朝だった。