止まらない水音トイレタンクとの夜
あれは忘れもしない、ある夏の夜のことでした。寝苦しさから解放され、ようやくウトウトしかけたその時、どこからともなく「チョロチョロ…」という微かな水の音が聞こえてきたのです。最初は隣の部屋のエアコンの音か、あるいは外の雨音かと思いましたが、どうも違う。音は断続的に、しかし確実に耳に届いてきます。気になってベッドから起き上がり、音のする方へ耳を澄ませると、どうやらトイレから聞こえてくるようです。恐る恐るトイレのドアを開け、便器の中を覗き込むと、便器の内側の水面が僅かに揺らいでいます。そして、タンクの方に耳を近づけると、やはりタンクの中から微かに水が流れる音が聞こえるのです。「ああ、水漏れか…」と、一気に眠気が覚めました。我が家のトイレも築15年。タンク内の部品もそろそろ寿命なのかもしれません。とりあえず、タンクの蓋を開けて中を確認してみることにしました。懐中電灯で照らしながら中を見ると、オーバーフロー管の少し下あたりまで水が溜まっており、ゴムフロートと呼ばれる黒いゴム栓のあたりから、僅かに水が便器の方へ流れ込んでいるように見えます。レバーを操作してみると、ゴムフロートはちゃんと上下しますが、完全に密閉されていないようです。これが原因かと見当をつけました。しかし、時刻は深夜2時。今すぐ修理業者を呼ぶわけにもいきません。かといって、このままチョロチョロと水が流れ続けるのも水道代が気になりますし、何より水の音が気になって眠れそうにありません。応急処置として、まずはトイレの止水栓を閉めることにしました。タンク横の壁にある、マイナスドライバーで回すタイプの止水栓を、ゆっくりと右に回して閉めます。これで、タンクへの給水が止まり、便器への水の流れも止まりました。ようやく静寂が訪れ、ホッと一息。しかし、このままではトイレが使えません。朝になったらすぐに修理業者に連絡しようと決め、その夜はなんとか眠りにつきました。翌朝、早速業者に連絡し、見てもらったところ、やはりゴムフロートの劣化が原因でした。部品を交換してもらい、無事に水漏れは解消。あの夜のチョロチョロ音は、今となっては忘れられない思い出ですが、水回りのトラブルは本当に突然やってくるものだと痛感した出来事でした。