トイレの水を流し終え、静寂が戻るはずの空間に、突如として響き渡る「ゴーッ」という、うなるような異音。その音の正体は、一体何なのでしょうか。その原因は、主に、水を供給する「給水管」と、水を排出する「排水管」の、どちらかで発生している「水の流れの乱れ」にあります。ここでは、その音が発生するメカニズムを、もう少し詳しく探っていきましょう。まず、最も一般的な原因として考えられるのが、トイレタンクに水を補充する過程で生じる「給水管の共鳴音」です。水を流すと、タンク内のフロートバルブが開き、空になったタンクに、給水管から勢いよく水が流れ込みます。この時、給水管を通る水の勢いが強すぎると、管の内部で乱流が起き、それが振動となって「ゴー」という音を発生させることがあります。また、給水管の途中にある「止水栓」の開度が中途半半端であったり、あるいは、タンク内の給水装置（ボールタップ）のフィルター部分に、ゴミや水垢が詰まっていたりすると、水の通り道が狭くなり、そこを水が無理やり通る際に、笛のような原理で、大きな音を立てることがあるのです。これは、水道の蛇口を少しだけ開けた時に、音がするのと同じ現象です。次に、より注意が必要なのが、「排水管からの異音」です。これは、便器の内部や、その先の排水管で、トイレットペーパーや排泄物が詰まりかかっている場合に発生します。水を流した際に、スムーズに流れずに、詰まっている箇所を、空気と水が無理やり通り抜けようとすることで、「ゴボゴボ」という音に混じって、「ゴー」という、空気が抜けるような音が聞こえるのです。これは、本格的な詰まりの前兆であり、放置すれば、汚水が逆流してくる危険性もはらんでいます。さらに、マンションなどの集合住宅では、少し特殊な原因も考えられます。それは、他の部屋、特に上の階の住人がトイレを流した際の排水音が、建物全体の排水管（共用縦管）を伝わり、共鳴して、あなたの部屋のトイレで「ゴー」という音として聞こえる、というケースです。この場合、あなたの家のトイレに異常はなくても、音が聞こえることになります。このように、「ゴー」という音一つをとっても、その発生源は、給水か、排水か、あるいは建物全体の問題か、と多岐にわたります。その音の「鳴るタイミング」と「性質」を、注意深く聞き分けることが、原因を特定するための、重要な手がかりとなるのです。